お知らせ

[プレスリリース] iSPP、「東日本大震災 情報行動調査報告書」を公刊

iSPP、「東日本大震災 情報行動調査報告書」を公刊
岩手・宮城・福島 3 県の被災者 3000 名が回答した、初の本格的な情報行動調査

PDF 版をダウンロード

2011 年 9 月 30 日
情報支援プロボノ・プラットフォーム(iSPP)

東日本大震災による災害からの迅速な復興とそれへの支援・貢献を目指す非営利団体「情報支援プロボノ・プラットフォーム(iSPP)」は、岩手県・宮城県・福島県の被災地の住民を対象に、地震発生直後から 3 カ月後までの情報行動について大規模かつ本格的な調査を実施し、その結果と提言などをまとめた『東日本大震災 情報行動調査報告書』を、本日発表しました。また同時に、被災地の NPO や自治体などへの無償提供と、一般および学術・研究機関への販売を開始しました。

本調査報告書は、岩手・宮城・福島 3 県の被災地の住民を対象に、インターネットを利用したアンケート調査と、調査員による個別面談調査の 2 種類の調査結果に基づき、まとめられています。アンケート調査は 7 月初旬~中旬に実施され、有効回答数 2815 件。面談調査は7月初旬~末に実施され、有効回答数186件でした。アンケート調査と面談調査による有効回答の合計は 3001 件で、岩手・宮城・福島 3 県の 183 市町村の住民から回答を得ています。

調査では主として、被災地の住民が、地震発生直後、1 週間程度、1 カ月程度、3 カ月程度の 4 つの時点で、どのような情報を必要とし、それをどの機器やツールを使って入手・発信・活用したか、あるいは利用できなかったか、などを尋ねています。

本調査報告書は、被災地の住民を、岩手・宮城・福島各県の内陸部・沿岸部の 6 つの地域に区分し、各地域の 4 つの時点での情報行動を捉え、その時系列変化や地域による異同を明らかにして、被災時の情報行動を総合的に分析したものです。さらに、この分析に基づき、災害時の情報の有効な利用法や、今後の施策・政策・サービスへ向けた提言をまとめています。

東北 3 県の被災地の住民を対象とした情報行動調査報告書しては、その範囲・内容・規模において、わが国初の本格的な刊行物となります。

面談調査では、東北の ICT 関係者が調査員となり、被災現場へ赴いて被災者と面会し、調査を行っています。多様な自由回答を含めて、インターネットによるアンケート調査の定量性を補完する、定性的な調査結果を得ることができました。面談調査の回答者は、重度の被害を受けた方が多く、さらに、携帯電話やパソコンなどの IT リテラシーが高くない方も数多く含まれています。東北の ICT 関係者によるヒアリング調査では、被災体験や被災者の真情を語る多彩な言葉が多数含まれ、災害時の状況や被害の実態、および情報行動を深く知ることのできる内容が得られています。

● 主な調査結果
東日本大震災の岩手・宮城・福島 3 県の被災地の住民の情報行動について、インターネットによるアンケート調査と面談調査の結果から、以下が明らかになりました。

1. 地震発生から時間が経過するにつれ、利用された情報機器や情報源は大きく異なった。地震発生直後は、ラジオやワンセグ放送が利用できたが、テレビ、インターネット、携帯はほとんど利用できなかった。1 週間程度から 1 カ月程度までになると、テレビ、新聞などが役に立った。

2. 情報行動の地域差が大きく、岩手県・宮城県は内陸部・沿岸部とも、地震発生から約1週間、「情報の空白地域」となった。この期間、これらの地域では、テレビ、パソコン、固定電話はほとんど使えなかった。津波に加え、停電の影響も非常に大きかった。

3. 電池式のラジオやワンセグ放送はふだんよりも利用され、避難の役に立ったとの回答がある。

4. 携帯電話に対する不満が、発生直後に集中した。ただし、携帯電話の通話やメールが安否確認に役立ったとする回答はおのおの過半数を超え、他の情報手段を大きく引き離した。不満は、携帯電話への依存度の高さを示している。

5. テレビ・ラジオに対して、津波や原発に関する報道のあり方について批判・不信が多かった。

6. インターネットは、地震発生直後は利用が大きく落ち込んだ。アクセスできた人の間では、ヤフー、ツイッター、グーグルが役に立った。SNS では、ツイッターとミクシィがよく使われたが、グリー、モバゲー、フェイスブック、ユーストリームなどは発生直後から 3 カ月程度まで、震災以前の水準に戻らなかった。

7. 携帯電話による災害伝言板や 171 などの安全確認サービスはほとんど使われず、有用度がきわめて低かった。

本調査報告書では、調査結果を踏まえ、以下の提言をまとめています。

● 今後への提言(暫定版)
1. 初動に必要な ICT による備えを固めよう

・非常用通信設備を用意しておき、災害発生直後の「情報の空白地域」へ通信設備を携えた先遣隊を派遣。被害情報や支援ニーズの収集・整理にあたり、発信する
・被災地の隣接地に拠点を設置し、そこから現地に出動する体制と仕組み(仮称「被災支援拠点」)作りを全国レベルで推進する(参考:遠野市)

2. ICT 関係者の緩やかな連携体制「災害対応 ICT 連携協議会」(仮称)を組織しよう

・目的:災害時の ICT による迅速・効果的な被災・復旧支援の推進
・異なる分野の事業者・組織・自治体・NPO・個人を結ぶ連携の推進

3. 国・自治体の防災計画に、情報の戦略的活用を明確に組み込め

・首相官邸の危機管理センターをはじめ、国・省庁・自治体の災害対応部署・対策本部などに、緊急時 ICT システムの戦略的な活用体制を整備する
・災害時の自治体情報システムに対する支援体制を整備する

● 調査報告書の無償提供と販売について
iSPP では本日より、被災地の NPO および自治体に対し本調査報告書 PDF 版(ローデータ等なし)の無償提供を開始します。詳細は、iSPP 事務局までお問い合わせください。

一般向け販売および学術・研究機関向けのアカデミック販売は、株式会社インプレスR&D のオンライン販売サイト「libura PRO」(https://libura-pro.com/)で行います。一般向け販売では、冊子版と PDF 版があり、それぞれにローデータ付属あり・なしの版が用意されています。詳細は、libura PRO へアクセスをお願いします。

また、iSPP では、本調査報告書の公刊を機に、大学等を対象に共同研究の公募をスタートします。共同研究の機関に対しては、本調査報告書に加え、クロス集計データやローデータを無償提供します。詳細は、iSPP 事務局までお問い合わせください。

▼ NPO 等無償配布と共同研究の申込先
メール:office@ispp.jp ※@を半角におきかえてください。
FAX:03-5468-1237

● 『東日本大震災 情報行動調査報告書』
・発行・編著:情報支援プロボノ・プラットフォーム(iSPP)
・販売:株式会社インプレスR&D
・発売日:2011 年 9 月 30 日(金)
・判型:A4 判
・ページ数:312 ページ
・価格:オンライン販売サイト「libura PRO」(https://libura-pro.com/)参照

*目次および図表類の資料一覧は、本リリース付属の[資料編 2]に記載しています。

※本報告書の販売にともなう収益金は、iSPP の設立主旨にしたがい、被災地の復旧・復興への情報支援活動および、将来の防災・減災のための情報通信技術(ICT)の応用のために活用させていただきます。また、この度の報告書販売におきまして、株式会社インプレス R&D 様には、被災地を支援する iSPP の活動の主旨にご賛同いただき、販売手段の提供、コスト面での優遇等、格別なご配慮をいただきました。

● 調査概要
・ 調査対象者:岩手県、宮城県、福島県の被災地の住民(内陸部・沿岸部)
・ 調査内容:地震発生時から 3 カ月後までに必要とした情報、利用した情報機器・ツール、役に立った情報源、関係者への意見・提案など
・調査方法:
(1)インターネットによるアンケート調査
(2)調査員による個別面談調査

・ 調査期間:
(1)アンケート調査:2011 年 7 月 4 日~11 日
(2)面談調査:2011 年 7 月 1 日~31 日

・ 有効回答: 3001 件
(1)アンケート調査:2815 件
(2)個別面談調査:186 件

● 本件のお問い合わせ先
情報支援プロボノ・プラットフォーム 事務局
〒150-0011 東京都渋谷区東3-22-8 サワダビル 4F
(モバイル・コンテンツ・フォーラム内)
担当:岸原、臼井
TEL:03-5468-5091
FAX:03-5468-1237
Mail:pr@ispp.jp ※@を半角におきかえてください。
Web:http://www.ispp.jp/
facebook:http://www.facebook.com/iSPPFB


本プレスリリースの詳細資料はこちらをご参照ください。